高配当株投資に興味がある人は多いと思う。
わたしも興味があり、長年取り組んできた。だが、配当をもらっても、「割に合わないな」、「そもそもこの投資は失敗だったな」と思うケースが普通にある。わたしは、今現在でも、これらのケースのツケを含み損や機会損失という形で支払っている。
高配当株投資にはメリットもあるが、同時に大きなデメリットもあるのだ。
なぜ高配当なのか
そもそも、なぜ高配当なのか…と考えてみよう。
まず、一時的な原因で高配当になっている、というケースがある。
たとえば、1)記念配当による、2)資産売却益などの一時的な利益を配当に回している、というケースがある。記念配当は、翌年以降も維持することはあるが、落とす(維持しない)こともよくある。したがって、記念配当が続くと考えない方がいい。
3)株価が下落している、ということもある。
~ショックがあると、軒並み高配当株が増える。それは、単純に株価が下落したためだ。また、銘柄固有の問題により、株価が下落して高配当になる、ということがある。たとえば、サプライズでネガティブな決算が出れば、株価は下落して配当利回りは上がる。
権利落ち日以降に株価が下落し、配当利回りが上がる…ということも普通のことだ。

銘柄の根本的な問題で株価が低迷し、高配当になる…ということもあるよ。この場合は、人気や業績の低迷が長く続くことがあり、注意が必要になるよ。
高配当でなくなる恐れがある
高配当株に投資するときは、内容を調べないと痛い目にあう。
記念配当などの一時的な原因で高配当になっている株に投資しても報われない。
また、無理をして配当を出しているような銘柄であれば、減配のリスクがある。たとえば、配当性向が右肩上がりであり、100%に近づいている、ときどき100%を超えることがある…という状態であれば、減配のリスクが高まっている…とできる。株主優待を改悪・廃止した場合も、警戒する必要があるだろう。
高配当株が減配することは、特にめずらしいことではない。

たとえば、「日産自動車」は14~19年まで毎年増配し高配当株で有名だったけれど、20年に大幅な減配、21年には無配に転じる予定だよ。連続増配中の時期には、とても予想できなかったことだよ。
ナンピン買いをしたくなる…
高配当株を買うときは、「この配当利回りはおいしい」と考えインする。
そこから株価が下がれば、配当利回りがさらに上がるので、「もっとおいしい」と思ってしまう。
新たに「まさか、これ以上利回りが上がることはないだろう…」という思考も入ってくるので、ナンピン買いをしたくなるのだ。もし、株価が右肩下がりの銘柄にナンピン買いを入れ続けるとどうなるか…考えるだけでも恐ろしい。
投資資金が底をつき、含み損+機会損失というダブルパンチを浴びることになるのだ。

ダブルパンチを浴びてKO負け。相場から離脱・退場するパターンだよ。
JT(2914)の場合は
現在でも高配当株で有名なJT(2914)の場合だが、
株価は2016年の2月に高値「3750」をつけ、それ以降、右肩下がりになっている。

※執筆時の株価は「2048」。好地合いに逆行し、45%を超える下げになっている。
この株を2016年以降にインして、ナンピン買いをしていたら…今ごろはかなりの含み損を抱えて、身動きがとれなくなっているだろう。「投資に失敗した…」と臍を噛んでいるはずだ。
実はわたしにも該当することで、同じく高配当銘柄として買った「キヤノン」とともに、結構な含み損を抱えている。日経平均が上がっても、これらの銘柄の株価はさほど上がらないので、含み損を解消することができていない。
見事に、「含み損+機会損失」というダブルパンチをもらってしまった。

全力買いしていたら、今ごろは相場から退場していたと思う。当時は、5年間も右肩下がりになるとは、とても想像できなかったよ。
今後、成長しない恐れがある
高配当銘柄は、今後あまり成長しない恐れがある。
配当利回りランキングの上位の銘柄をみて、「並以上に成長するだろう」と思えるかどうか。
わたしが高配当銘柄として買った「JT」、「キヤノン」、銀行株が平均以上のペースで成長するかといえば、「それはどうかな…」と思う。高配当ではないけれど、成長しそうな銘柄はほかにあるよね…と思ってしまう。
もちろん、JTやキヤノン、銀行株に含むところはなく株主として応援しているが。

高配当銘柄には、投資家に<今後期待できない><さほど成長しない>と見切られているから、株価が低迷して高配当銘柄になっている…という面があるよ。
資産を増やすには不向き
自分の資産を増やしたいのであれば、高配当株投資を中心にすべきではない。
今述べたように、(おそらくだが)並以上に成長しない確率の方が高いためだ。
※配当金を原資にして再投資をすれば、ある程度は増える。
高配当銘柄というのは、長く持っていれば着実に株価が上がり、資産が増える…という銘柄ではない。そうではなく、配当収入を増やすための銘柄である、とした方がいい。だから、資産を増やすには不向きなのだ。
資産は増えなくてもいいが、配当収入を増やしたい…という投資家に向いている。

贈与や相続の関係で、キャッシュフローは増やしたいが、資産を増やしたくない…という投資家もいると思う。そういう人には向いていると思う。
元手と時間、忍耐力が必要に
高配当株投資で満足しようと思えば、元手と時間、忍耐力が必要になる。
他人が大きく儲けた話を聞きながら、小さな利益を長期にわたり積み重ねることは大変だ。
では、長期間コツコツ頑張った結果、利益はどれぐらい出るのだろうか。
元金100万円+年利3%の複利(配当収入をすべて再投資する)で10年回せば、約34万円の利益になる。定期預金なら満足できる数字だが、高配当株投資の場合は、元金が目減りする+年利が下がるリスクがあるので、この利益で満足できる…という人はあまり多くないだろう。
複利は大きな武器になるが、その力をいかすためには元手と時間、忍耐力が必要になるのだ。

そのほかにも、銘柄に対する分析力も必要になる。ゆえに、物理的・性格的に向かない人がこの投資をしても、リターンは小さくなるよ。
まとめ
今回は、高配当株投資のデメリットについて書いた。
この投資法には<落とし穴>があるので、それを知った上で投資をした方がいい。
※実際に落ちてみてはじめてわかる、ということが多々ある。
今回の記事で述べたデメリットは、1)高配当でなくなる恐れがある、2)思わずナンピン買いをしたくなる、3)今後、成長しない恐れがある、4)資産を増やすには不向きである、5)元手と時間、忍耐力が必要になる、の5つだ。
一見、おいしく見える話には裏がある、と思っていた方がいい。
わたしは、失敗した経験から「高配当投資」の定義自体を変えている。
現在、利回り上位の銘柄に投資することではなく、3年、5年後~に利回りが高くなるであろう銘柄に投資すること、としている。将来配当が高くなることにより、現在支払った金額(元金)の利回りが高くなる銘柄に投資する、ということだ。
この方法に変えてから、今のところ大きな失敗はしていない。
今回の記事:「高配当株投資にはデメリットがある」