ごく普通の投資家がFIREできるか?わたしは、やり方を間違えなければできると思う。
投資の元手になる資金の確保が前提になるが、その資金を適切に運用することができれば、複利と時間のちからを活用することで、普通の投資家であっても、FIREを達成することができるだろう。
ただし、「適切に投資」というところが要であり、それができないとFIREは遠くなる。
FIRE とは何ぞや?
FIRE(Financial Independence Retire Early:経済的自立+早期退職)という言葉がある。
投資+貯蓄を通じ経済的な自立を達成し、(生活のために勤めている)会社を早期に退職することまたはその状態を指す言葉だ。もちろん FIRE を達成しても勤めている会社をやめる必要はない。
今の仕事や職場に満足していれば、無理してやめる必要はない。ただし、状況が変わればいつでも転職できるし、自分で事業をはじめるハードルも低くなるだろう。気分的には随分と違うはずだ。
私たちが FIRE を目指す理由は、「経済的および精神的な自由度を増すこと」にありそうだ。

経済的自立とは、資産所得により生活費を賄うことだ。FIREを達成すれば、気持ちに余裕が生まれる。自分本位という枠組みから抜け出すことができ、他者にやさしくなれたりする。ゆえに、(FIREには)自分を取り巻く人間関係がよくなり、自分の居心地がよくなる、という好ましい二次的な効果があるよ。
FIRE に才能やセンスは不要
FIRE を達成するために、特別な才能やセンスは不要だ。
あえていえば、投資に興味がある(好きである)、自分の興味があることについて勉強することができる、長期的な目線を備えている、すぐに結果が伴わなくても、長年コツコツと努力を積み重ねることができる(長年にわたり規律を保つことができる)、という資質は必要だが、それらはごく普通の人でも兼ね備えることのできる資質である。
自動積立にして気絶しておけば、それらの資質さえもさほど必要ないかもしれない。

若さと健康、副業による収入は(FIREを達成するための)大きな武器になるよ。無駄な支出をせず、身の丈に合った生活をする、という生活方針も有効だよね。まずは、生活にかかるコストを見直し無駄を省きたい。
どの程度を目指すのか
実際に FIRE を達成した人たちの状況を確認してみよう。
以下は、日本経済新聞で紹介されていた投資家さんのデータだが、
Aさん | Bさん | |
年齢 | 50代 | 60代 |
運用資産 | 2億円 | 6.7億円 |
年間配当金 | 470万円 | 1765万円 |
配当/運用資金 | 2.35% | 2.63% |
投資歴 | 25年 | 35年 |
保有銘柄 | 250 | 600 |
普通の投資家は、このAさんの数字を目指すことになるだろう。
Bさんの数字は、Aさんの数字を達成すると遠くにぼんやり見えてくる、という頂きになる。
ごく普通の会社員であれば、投資に回せる金額は限られるので、早くても20年程度はかかる。
なので、できるだけ早くから投資をはじめた方がいい。会社に持ち株制度がある人は、それを利用しない手はない(会社から奨励金が支給され、自己負担額以上の株を取得できることもある)。これから就職・転職する人は、福利厚生の一環として従業員持株制度のある会社を狙えばいい。
もう若くはない、という人でも、投資をできるだけ早くはじめた方がいい。

投資金額を増やすことで、失った時間をある程度取り戻すことはできるよ。
高配当投資で FIRE を目指す
FIRE を達成する有力な手段は、やはり高配当投資だろう。
キャピタルゲイン狙いの投資で安定的に稼ぎ FIRE を達成することは難しい。
なぜなら、その投資には、市場・銘柄に対する理解や洞察、適切なリスク・メンタル管理、情報収集・解析能力、投資の戦略立案・修正及びその時々の相場付きに合わせて戦術を使い分ける能力などが必要になるためだ。さらには、運の要素も多分に入ってくるので、キャピタルゲイン狙いの投資で長きにわたり安定的に資産を積み上げることは、とてもむずかしい。
たえず流動的に変化する相場の中で、都度適切に行動することは至難の業だ。何か汎用的な売買手法を発見した、と思っても、実は汎用的ではなく、限られた局面でしか使えない、ということが普通にある。
ただし、ダウ理論やプロスペクト理論などの基礎的な投資理論は学んだ方がいい。
普通の投資家の場合、コツコツ稼いでドカンとやられる、というのがお決まりのパターンだ。ゆえに、わたしたちのような普通の投資家であれば、高配当投資で FIRE を目指すやり方が現実的だ。

もし本当にキャピタルゲインで(インデックスを上回る率で)長期間安定的に稼いでいる、という投資家がいれば、その人は上位のコンマ数%に入るような<例外的な>投資家だろうね。ごく一部の著名な投資家は、外れ値に該当するような極めて特殊な投資家なんだ。有名人でたとえると、大谷や井上、藤井名人クラスの人だから、彼らになれることはない。
FIRE を導く高配当投資とは?
高配当投資=配当利回りの高い株 ということになるが…
単に「配当利回りの高い株」ランキングから銘柄を選んで買えばいい、ということではない。
中には雪庇(せっぴ)のような銘柄があり、それを踏み抜いて落下することがあるためだ。高配当で人気を博した銘柄が、数年後に業績悪化に伴い株価は下落、減配して配当利回りの低い株に転落することがある。
わたしは自分の投資経験から、株の高配当投資を次のように定義している。
必ずしも、現在の利回りランキング上位の銘柄に投資することではなく、3年、5年後に利回りが高くなるであろう銘柄への投資。つまり、将来の配当金が高くなることにより、「現在投資した金額(元金)に対する利回りが高くなる銘柄への投資」のことだ。
ゆえに、配当が成長する+(現時点でも)ある程度の利回りあり、という銘柄に投資する。

配当が成長する≒会社が成長する、としていいだろう。中期経営計画で累進配当政策を掲げている会社を選ぶ、という方法もありだ。
銘柄選びが鍵になる
高配当投資で成功するためには、銘柄選びがとても大切になる。
その会社に資本家としてベットするのだから、本当によく調べなければいけない。
とは言え、わたしもそうだが、ざっと調べただけでその会社の株を買ってしまうことがある。たとえば、会社のサイトや株探の「会社情報」、「業績推移」などを見て、その会社のことがわかったような気になってしまう。これでは不十分だ。
わたしのやり方はこうだ。
とりあえず、小さい資金で気になる銘柄を積極的に買ってみる。単元未満株でいい。実際に買って株主になると、見える景色が大きく変わる。「カラーバス効果」が働き、買った銘柄の情報を自然にキャッチできるようになるのだ。株主になれば、会社から報告書も送られてくるので、とにかく情報が手元に集まりやすくなる。
投資に必要な情報が集まれば、手持ちの複数の銘柄をじっくりと比較検討することができるようになり、本腰を入れてベットすべき銘柄が自然に浮かび上がってくる。ある程度、時間と手間はかかるが、虎の子の資金を投入するためには、必要な事前準備になる。
簡単にいえば、自分がそこで一生働きたい、と思う会社の株を買えばいいのだ。

どの銘柄に投資するか(どの会社に就職するか)で、あなたの将来が決まる。就職時の会社選びとは違い、投資の場合は容易に乗り換えることができる。判断を間違えても、すみやかに修正することができる。この点は大いに利用すべきだ。
まとめ
ごく普通の投資家でも FIRE を達成することはできる。
そのやり方は、主業(+副業)でしっかり稼ぐ+高配当投資になる。
※同時に、使える制度の利用、無駄な生活コストのカット、なども必要になる。
FIRE達成モデルとしては、先に述べたAさんの例が適当だ。つまり、所用時間が25年程度、資産は2億、配当によるキャッシュフロー・インが500万前後、運用利回りが2.5%前後、というところだ。ここまで行けば、資産をさほど減らすことなく、余生を楽しむことができるだろう。
高配当投資で最も大切なことは、銘柄選びだ。
ここを間違うと、FIREは逃げ水のように遠ざかる。とは言え、銘柄選びを間違うことはよくあることだ。自分の審美眼はさほどあてにならない(笑)。だから、小さい失敗は許容する。小さい失敗をしながら本物の<あたり>に近づき、あたりを引く、というイメージでいいだろう。
わたしは、ごく普通の投資家でも、FIREを達成することはできる、と確信している。