ROAは有名な指標なので、株の投資家であれば聞いたことがあるはずだ。
だが、計算式は知っており、意味合いも知っているが、実践でどう使えばいいのかわからない…というケースがあると思う。目安は5%だから、5%以上の銘柄を買えばいい、という単純なものでもなさそうだ。
そもそも、5%という数字にも、しっかりした根拠があるかどうかわからない。
今回は、ROAの実践的な使い方について書いてみたい。
ROAとは
ROAとは「Return On Assets」の略語である。
文字どおり、総資産からのリターン(%)ということだ。
ROAが高ければ、資産を上手く管理・活用し利益を上げている、低ければ、資産の管理・活用に問題がある、または、構造的に利益を出しにくいビジネスをしている、ということになる。
ちなみに、ROEという似た指標があるが、ROEには負債の割合が多ければ数値が高くなる、という特徴があるため、わたしは主にROAの方をみるようにしている。

ROAは(比較的だけど)嘘をつかない、と考えているよ。
投資に例えると
あなたが株の投資用に確保する金融資産を総資産としよう。
投資から得る利益を総資産で割れば、投資のROAを求めることができる。
たとえば、証券口座に1000万円ある。そのうち800万円が株であり、40万円/年の利益がある、というケースであれば、ROAは40÷1000=4% ということになる。※40÷800 ではない。
この値が高ければ、資産を上手に管理・運用している、ということになる。
業種別のROAは
業種により、ROAの目安は変わってくる。
ビジネスには、構造的に利益を出しやすい・出しにくい、があるためだ。
業種別の(上位銘柄の)ROAは以下のとおり。
サービス: 26.6%
情報通信: 22.2%
医薬品: 14.4%
機械: 11.7%
建設: 11.3%
不動産: 11.2%
食料品: 7.88%
繊維製品: 6.25%
電気・ガス:4.25%
銀行: 0.54%
平均:10.9%
※業種は抜粋。東証1部のROAの高い銘柄の平均を求める。
サービス、情報通信が高い。一方で、電気・ガス、銀行が低い。固定資産が大きくなりがちな電気・ガス、銀行は、どうしてもROAが低くなる。同様の理由で、陸運の鉄道なども低くなる。

業種により有意な差があるんだ。
ROAが考慮しないもの
ROAが考慮するものは、「純利益」と「総資産」のみだ。
だから、負債の割合がどうなのか、現在の株価は割安なのか割高なのか…という問いに対しては無力だ。
利益にしても、ブレをどう評価するかという問題がある。一時的に利益がマイナスになり、ROAがマイナスになっても、あくまでも「一時的」なものであれば、買いを検討することができるかもしれない。
ゆえに、複数年での評価+トレンドによる評価、が必要になるだろう。

値が高くても、右肩下がり…というケースがあるよ。
株の購入にどう活かす?
では、このROAを実践でどのように使えばいいのだろうか。
ROAの高い業界の株を買う
まず、ROAの低い業界の株を避け、高い業界の株を買う、という戦術がある。
具体的には、電気・ガス、銀行といった銘柄を避け、サービス、情報通信、医薬品、機械…などから銘柄を選ぶ手法だ。
ざっくりだが、固定資産を多く抱え、その稼働率に大きく依存する業界の銘柄は避け、身軽で機動力の高い業界の銘柄に投資する、という考え方になるだろう。
ただし、ROAが低い業界というのは、儲ける仕組みを作るのが大変な業界であるので、(心理的・物理的に)参入障壁が高く、競争が限定的になる、というメリットがあるかもしれない。
業界の中で高い銘柄を買う
業界にこだわらず、その業界の中でROAの高い銘柄を買う、という戦術もある。
どの業界でも、成長する会社とあまり成長しない会社がある。前者に投資すると報われるし、後者に投資すると報われない。ROAの高い会社というのは、前者に属する可能性が高いので、買ってもいいのではないか、ということだ。
ただし、ROAのトレンドも気にした方がいい。右肩下がりでは、あまり期待できない。
迷ったら高い方を選ぶ
どちらにしようか迷ったら、ROAの高い方を選べばいい。
実際に株を買う場面では、「どちらの銘柄にしようか…」と迷うことがある。
両者に複数の分析をほどこして、ROA以外の指標の評価が互角であれば、ROAの高い方を選べばいい。単純に比べて…というのもありだが、業界が違う場合は、業界でのランクが高い方を買えばいい。
業界の勝ち組を買えるのなら、その方がいいかもしれない。
まとめ
今回は、ROAの使い方について書いた。
まずは、ROAの低い業界を避け、高い業界から銘柄を選択する、という戦術がある。
これはこれでありだと思う。
わたしは主にインカムゲインを狙う投資をするが、ROAの低い業界の会社が(平均以上のペースで)ビジネスや配当を成長させている、というイメージはほとんどない。だから、そういう業界の銘柄を避けて、ROAの高い業界から銘柄を選ぶ、というのはありだ。
ただし、めぼしい株はすでに高くて買えない、ということがよくある。
そんなときは、業界の中でROAの高い銘柄を買えばいいと思う。そうすれば、銘柄の選択肢や購入の機会が増えるだろう。
もちろん、ROAだけで買いの判断をすることはできない。
先に述べたように、ROAの値には、負債の割合がどうなのか、現在の株価は割安なのか割高なのか…という問いに対する答えはないので、ほかの指標と併用して判断すべきだ。
ROAをことさら重視して株を買う、というのはやめた方がいいだろう。