自分が保有している株に「TOB」がかかることがある。
そんなときは、突然のことで驚くことになるが、否応なく対応を迫られることにもなる。基本的には、素直にTOBに応じればいいのだろうが、諸事情によりそうできないこともある。持ち株の対象企業が上場廃止になる場合、放置して大丈夫なのだろうか。若干、不安な気持ちになる。
今回は、TOBについて個人的な経験を踏まえまとめてみたい。
取り得る選択肢は
持ち株にTOBがかかった場合の選択肢は、3つある。
①TOBに応じる
②市場で売却する
③TOBに応じない(そのまま保有して放置する)
一番面倒がないのは、②の「市場で売却する」だ。
市場で売却するメリットは、1)簡単であり時間の消費を最小限に抑えることができる、2)売却資金をすぐに利用することができる、だ。デメリットは、TOB価格よりも少し安い価格での売却になる、ということだ。
なお、困ったことに単元未満株の市場での売却はできない。もしかすると、できるケースがあるのかもしれないが、わたしが実際に経験したケースでは、すべてにおいてできなかった。
わたしであれば、通常は②の「市場で売却する」を選択する。

ただし、自分が普段使っている証券会社が公開買い付けの代理人であれば、TOBに応募すると思う。
※TOB=Take Over Bid
手続きが面倒である
①の「TOBに応じる」だが、
メリットとしては、確実にTOB価格で売却できる、ということだ。
デメリットとしては、「手続きが面倒で時間を要する」ということがある。
まず、1)指定の証券会社に新しく口座を開き、2)自身が利用する証券会社に対し、対象株式の移管の手続きをする、必要がある。郵便によるやり取りをはさめば、時間もかかる。手続きを後回しにしていると、期限に間に合わない、ということもある。
今後、使う予定のない証券会社に口座を開くことを負担に感じることもある。

わたしがTOBに応じたときは、半休をとり、指定の証券会社に出向いて口座の開設手続きをした。ネットで口座開設不可&郵便でやりとりする時間がなかったためだ。
TOBに応じなければ…
③TOBに応じない、という選択肢もある。
上場廃止になることがわかっていても、そのまま放置する。
この選択肢のメリットは、比較的楽なことだ。
もちろん、換金の際の手続きはあるが、さほど面倒ではない。デメリットは、1)換金までに時間がかかる、2)上場廃止になった場合、TOB価格で換金してくれるかどうか不安になる、ということだ。
換金までに数ヶ月以上時間がかかるので、その間資金は動かせない。

必ずしもデメリットではないが、売却益の税務上の取り扱いが変わる、ということもある。
TOB価格で換金できる?
TOBに応じない場合、保有株をTOB価格で換金できるのか、という疑問がある。
特に、TOB後、上場廃止になった場合、どうなるのだろうか。相応の対価をもらえるのだろうか。上場廃止になると、保有株の中から当該株式が消えてしまうので、不安に思うこともあるだろう。
以下、実際のケースで確認してみる。
Case 1.
目的:公開買付者が対象者を完全子会社化すること ※友好的TOB
株式のすべてを取得できない場合⇒<スクイーズアウト>を実施する⇒吸収合併消滅会社になる
本公開買付けの決済の完了後速やかに、対象者の株主の全員に対し、その所有する対象者株式の全てを売り渡すことを請求する予定です。株式売渡請求においては、対象者株式1株当たりの対価として、本公開買付価格と同額の金銭を対象者の株主に対して交付することを定める予定です。
つまり、条件を満たせば、TOB価格で買い取ります、ということだ。
Case 2.
目的:公開買付者が対象者を完全子会社化すること ※友好的TOB
上場廃止になる予定
本公開買付けにより、対象者株式の全てを取得できなかった場合には、本公開買付けの成立後、スクイーズアウト手続きを実施することを予定しております。株式売渡請求においては、株式1株当たりの対価として、本公開買付価格と同額の金銭を交付することを定める予定です。
こちらも、Case 1 と同じだ。
Case 3.
目的:吸収合併 ※友好的TOB
非公開化⇒上場廃止になる予定
公開買付成立後⇒スクイーズアウト⇒少数株主に対する金銭(公開買付価格×株数)交付
いずれのケースも、TOBに応じなくても対価をもらえる、という形になる。
スクイーズアウトとは
スクイーズアウトとは、株式を非公開化するための手続きである。
スクイーズアウト(Squeeze Out)とは押し出す、絞り出す、締め出すという意味で、事業継承や完全子会社化を目的としたM&A(合併・買収)を行う際、少数株主から強制的に株式を買い取ることです。実行するには議決権の3分の2以上を所有している必要があります。買い取り価格は会社側に決定権があるため、株価時価や1株あたり純資産よりも低い価格で少数株主から株式を買い集めることも可能になっています。
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/japan/su/J0780.html
ここには、「買い取り価格は会社側に決定権があるため、株価時価や1株あたり純資産よりも低い価格で少数株主から株式を買い集めることも可能」とあるが、TOBの配布資料に「本公開買付価格と同額の金銭を交付する」とあれば、TOB価格で買い取ってくれる、としていいだろう。
まとめ
TOBについて個人的な経験を踏まえまとめてみた。
持ち株にTOBがかかった場合の選択肢は、3つある。
①TOBに応じる
②市場で売却する
③TOBに応じない(そのまま保有して放置する)
わたしであれば、自分が普段使っている証券会社が公開買い付けの代理人であれば、TOBに応募する。実際は、そうではないケースが多いので、普通は②の「市場で売却する」を選択することになる。
TOBに応募できなかったり、市場で売却できない場合は、そのまま保有して放置する。そうした場合(通常は)、時間は数か月かかるが、買い取ってもらえる。それまでは、ジッと待つしかない。
※換金できるまで、半年ぐらいはかかる、とみておいた方がいいだろう。
TOBへの応募がもっと簡単にできるようになればいいのだが。